電動スクーターとガソリン、2026年に買うならどっち

2026年6月4日 · Roel van Roozendaal

街中でスクーターに乗るライダー。ハンドルにスマートフォンのナビを取り付けている様子。

次の一台をスクーターか原付にしようと考えたとき、2026年の日本では一つ前にはなかった問いが加わります。電動にするか、ガソリンにするか。少し前まで電動の二輪は航続距離も値段も実用とは言いがたく、選択肢ですらありませんでした。それが、2025年に多くの50ccガソリン車が排ガス規制で生産を終え、入れ替わるように電動の原付が現実的な価格で並び始めたことで、状況は大きく変わりました。

私はベルリンでスクーターに乗り、二輪のためのナビアプリ Urban Rider を作っています。この記事の最後で触れるアプリも自分のものなので、そのつもりで読んでください。ここでは宣伝抜きで、日本で電動とガソリンのどちらを選ぶべきか、本体価格、維持費、航続距離と充電、バッテリー、免許、補助金、そして走行規制という観点から、2026年時点の数字をもとに冷静に整理します。

本体価格、まだガソリンが安い

購入のとっかかりはやはり値段です。国産の50ccガソリンスクーターは新車でも15万円前後から選べるモデルが多く、初期費用の低さは依然として大きな魅力です。

電動はどうか。長らく割高というのが定説でしたが、ここに変化が出ています。2026年3月に発売されたホンダの原付一種EVスクーター「ICON e:」は、バッテリーと充電器を含めて22万円。補助金を使わない素の価格としては、ガソリン車にかなり近づきました。後述する補助金を組み合わせれば、実質的な差はさらに縮まります。それでも、同クラスで横並びに比べれば、いまのところ初期費用はガソリンに分があると考えておくのが現実的です。

維持費は、乗るほど電動が効いてくる

初期費用で負けても、電動は走らせるほど取り返していきます。ガソリン原付の年間維持費は、軽自動車税2,000円、自賠責保険、任意保険、ガソリン・オイル代、点検代を合わせておよそ6万円台という試算が一般的です。燃費がリッター70km以上、スーパーカブ系なら約100km/Lと優秀でも、ガソリン代と定期的なオイル交換は必ずついて回ります。

電動はエンジンオイルもスパークプラグもなく、機械的な整備の手間が少ないのが利点です。走行コストも低く、ヤマハの電動スクーター「E-Vino」では1回の充電にかかる電気代が約14円、1kmあたりおよそ0.48円という数字が出ています。ガソリン車の燃料代が1kmあたり数円であることを考えると、毎日乗る人ほど差は積み上がります。なお軽自動車税は電動の原付一種でもガソリンと同じ年2,000円で、ここに差はありません。

航続距離と充電、ここが最大の分かれ目

電動を選ぶうえで最大の現実的な制約が、航続距離と充電です。2026年の原付一種クラスの電動スクーターは、満充電あたりの航続距離がカタログ値で40〜100km、実用域では40〜50km程度を見ておくのが無難です。先のICON e: もカタログ値81km、実用では40〜50kmが目安とされています。これは航続距離と充電のリアルを掘り下げた電動スクーターの航続距離と充電の記事でも触れている通りです。

ガソリン車なら数分の給油で満タンに戻りますが、電動の充電はそうはいきません。ICON e: の場合、家庭用コンセントでの充電時間は約8時間。出力の大きい配達向けモデルには3〜6時間で充電できるものもありますが、いずれにせよ給油の手軽さには及びません。自宅や職場に充電できる環境があるかどうかが、電動を快適に使えるかの分かれ目になります。

この弱点に対する日本らしい答えが、交換式バッテリーです。ホンダの「EM1 e:」は共通規格の交換式バッテリーに対応し、「Gachaco」のステーションで空のパックを満充電のものと差し替えられます。料金はEM1 e: で1回220円、その他の車種で440円程度。充電を待つ代わりに、ガソリンスタンドのように立ち寄って数十秒で交換し、走り続けられます。対応ステーションが近くにあるかは、購入前に必ず確認したい点です。

バッテリーの寿命と交換費用

電動ならではの長期的なコストが、バッテリーの劣化です。スマートフォンと同じで、充電池は使うほど少しずつ容量が落ちます。何年もつかは乗り方や充電の仕方しだいですが、いずれは交換が視野に入り、その費用は車種によって数万円規模になることがあります。これはガソリン車にはない出費なので、見落とさないでください。

逆に言えば、Gachaco のような交換式の仕組みは、この劣化リスクをサービス側が引き受けてくれるとも考えられます。常に状態のよいパックが供給されるため、自分でバッテリーの寿命を抱え込まずに済みます。充電式を買うなら交換費用を、交換式を選ぶなら月々の利用料を、それぞれ事前に確かめておきましょう。

免許は同じ、新基準原付に注意

電動だから特別な免許が必要、ということはありません。免許の区分はガソリン車とまったく同じです。ここで2026年に押さえておくべきなのが、2025年4月に始まった新基準原付です。従来は排気量50cc以下が原付一種でしたが、新基準では出力で区分するようになり、定格・最高出力が一定以下に抑えられていれば、総排気量125cc以下でも原付一種として扱われます。電動スクーターも同じ枠組みで、定格出力が基準内なら原付免許や普通自動車免許で乗れます。

ただし、原付一種である以上、電動・ガソリンを問わず法定速度30km/h、二人乗り不可、二段階右折といったルールはそのまま適用されます。この点は原付免許の基礎をまとめた記事と、50ccと125ccの違いを比べた記事でも詳しく扱っています。より速く走りたい、二人乗りもしたいという場合は、原付二種以上のクラスを選ぶことになり、これは電動でも同じ考え方です。

補助金、いまは電動を後押しする側

初期費用の差を埋めてくれるのが補助金です。日本でも電動二輪は、国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の対象に含まれ、次世代自動車振興センターが申請の窓口を担っています。補助額は車種ごとに定められ、対象になるかは登録時点の条件によります。

これに上乗せできるのが自治体の制度です。たとえば東京都の「電動バイクの普及促進事業」では、都内に住民票のある個人が対象で、補助上限は原付一種で18万円、それ以外で48万円。しかも国のCEV補助金と併用が可能です。令和7年度は2026年3月31日まで申請を受け付けています。条件と上限額は自治体や年度で変わるため、必ず最新の公式情報を確認してください。ガソリン車にはこうした購入補助はなく、電動を選ぶうえでの大きな後押しになっています。

走行規制ゾーンは日本にはほぼない

ヨーロッパでは、古いエンジンの車両を市街地から締め出す低排出ゾーンが整備され、それが電動を選ぶ強い動機になっています。日本の二輪に関して言えば、そうした規制はほぼありません。東京都などには大型ディーゼル車を対象とした規制はありますが、原付やスクーターの走行を電動かガソリンかで分ける仕組みは現状ありません。つまり日本で電動を選ぶ理由は、走行規制の回避ではなく、補助金、静かさ、走行コストの低さにあるということです。この点は欧州市場との大きな違いとして、正直にお伝えしておきます。

電動とガソリン、ひと目で比べる

比較項目 電動 ガソリン
本体価格 やや高め。原付一種で22万円前後から(補助金で縮小) 安い。国産の新車で15万円前後から
走行コスト 非常に低い。1kmあたり1円を下回る例も。オイル交換不要 燃料代とオイル代がかかる。年間維持費おおむね6万円台
航続距離 満充電で実用40〜50km、カタログ値で最大100km程度 給油1回で長く走れ、長距離も問題なし
給油・充電 家庭充電は約8時間。交換式なら数十秒でパック交換(220〜440円) 数分で満タン。給油環境はどこにでもある
メンテナンス 整備項目が少ない。ただしバッテリー交換費用は要確認 定期的なオイル・消耗品交換が必要
市街地の乗り入れ 静かでクリーン。補助金あり。二輪向けの走行規制は事実上なし 走行規制での不利はなし。ただし購入補助もなし

結局、あなたはどちらを選ぶべきか

乗り方で答えは変わります。

どちらを選んでも、走り出してからは同じ課題に行き着きます。原付やスクーターが安全かつ合法に走れる道をどう見つけるか、ということです。多くのカーナビは、あなたの原付が走れない道へ平気で案内します。電動なら、そこに充電という変数も加わります。ルートと充電を一緒に考えたいときに役立つのが、次に紹介するアプリです。

Urban Rider という選択肢

ここからは私が作っているアプリの話なので、割り引いて読んでください。Urban Rider は、上に挙げたような大手のカーナビが二輪向けに作られていないことへの不満から生まれました。スクーターや原付のプロファイルを選ぶと、高速道路や主要幹線道路、走れないトンネルをデフォルトで避け、到着時刻もクルマの平均ではなく二輪の実際の速度をもとに見積もります。

電動で走る人のために、Urban Rider はルート沿いの充電スポットを出力やネットワーク、徒歩距離つきで表示します。航続距離を賭けに頼らず、どこで充電するかを織り込んでルートを組めます。スマートフォンの選び方や取り付けについては二輪でスマホをナビに使うコツの記事も参考になります。

正直なところも書いておきます。Urban Rider は大手に比べればまだ小さく、若いアプリです。現在はiOS で公開中、Android 版はオープンベータの段階です。それでも、クルマ向けに作られたものを二輪に流用するのではなく、最初から二輪を起点に設計したナビが必要だと信じて作っています。

よくある質問

電動スクーターとガソリン原付、結局どちらが安いですか?

本体価格は今のところガソリン原付のほうが安く、国産の新車で15万円前後から選べます。電動はホンダ ICON e: が補助金なしで22万円と差は縮まりましたが、まだ少し高めです。一方で走行コストはガソリンが1kmあたり数円なのに対し、電動は車種によって1kmあたり1円を下回る例もあり、毎日乗るほど電動が有利になります。補助金を使えば購入時の差はさらに小さくなります。

電動スクーターの航続距離と充電時間はどれくらいですか?

2026年の原付一種クラスの電動スクーターは、満充電あたりの航続距離がカタログ値で40〜100km、実用域では40〜50km程度が目安です。たとえばホンダ ICON e: はカタログ値81km、家庭用コンセントでの充電時間は約8時間です。出力の大きい車種は数時間で充電できるものもあります。日々の通勤や買い物なら多くの人にとって十分ですが、長距離には向きません。

電動スクーターのバッテリーは交換にいくらかかりますか?

充電式の場合、バッテリーは消耗品で、数年から使い方しだいでそれ以上もちますが、いずれ容量が落ちます。交換費用は車種により数万円規模になることがあり、購入前に必ず確認すべき点です。一方、ホンダ EM1 e: のように交換式バッテリー規格に対応した車種なら、Gachaco のステーションで満充電のパックと交換でき、料金は1回あたり220円から440円程度です。充電を待たずに乗り続けられます。

電動スクーターはどんな免許で乗れますか?

免許の区分はガソリン車とまったく同じで、電動だから特別ということはありません。2025年4月からは出力で区分する新基準原付が始まり、定格出力が一定以下の電動スクーターは原付免許や普通自動車免許で乗れる原付一種として扱われます。原付一種であれば法定速度30km/h、二人乗り不可、交差点での二段階右折といったルールも電動・ガソリンを問わず共通です。

日本にも電動を優遇する走行規制ゾーンはありますか?

ヨーロッパのような、排ガス基準を満たさない車両の市街地乗り入れを禁じる低排出ゾーンは、日本の二輪にはありません。東京都など一部の自治体には大型ディーゼル車を対象とした規制がありますが、原付やスクーターの走行を電動かガソリンかで制限する仕組みは現状ありません。電動を選ぶ理由は規制回避ではなく、補助金、静かさ、走行コストの低さにあります。

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