東京の片側3車線の幹線道路で、50cc の原付に乗ったまま Google マップに「いちばん早い道」を尋ねてみる。すると、原付一種では本来 二段階右折 が必要な交差点を、まるでクルマのようにそのまま右折させようとすることがある。アプリが壊れているわけではない。クルマのために作られたものを、あとからバイク向けに少し広げただけだからだ。その中間にいる存在、つまり 30 km/h で走る原付や、街なかをすり抜ける小さなスクーターは、これまでほとんど置き去りにされてきた。
私自身そうした乗り物に乗っていて、この記事の最後で紹介する Urban Rider というアプリを作っている。だから私は当事者であり、その分だけ偏っている。それを承知のうえで、ここでは2026年に原付・スクーター・バイクのライダーが実際に使えるナビアプリを、できる限り正直に見ていく。それぞれが何を得意とし、どこで力尽きるのかを並べていこう。
良い二輪ナビに本当に必要なものは何か
名前を挙げる前に、良い二輪ナビが満たすべき条件をはっきりさせておきたい。私が各アプリを測った物差しは次のとおりだ。
- 車両区分の理解。 原付や 125cc 以下が高速道路や自動車専用道路を走れないこと、特定のトンネルに入れないことを理解し、デフォルトでそこから外してくれるか。原付一種なら二段階右折まで踏まえているか。
- 低速に合わせたルーティング。 60 km/h のクルマ向けに計算した道と到着時刻は、30 km/h 制限の原付一種にはほとんど役に立たない。
- ひと目で読める表示。 ハンドルは机ではない。必要なのは、ひとつの指示、ひとつの距離、ひとつの速度であって、ウィジェットだらけの画面ではない。
- 本当に効くカスタマイズ。 25 km/h の電動キックボード、50cc の原付一種、60 km/h の原付二種、週末のツアラーは別物であり、同じルールで走らせるべきではない。
- 料金、プライバシー、対応端末。 年額いくらか、走行履歴を吸い上げないか、手持ちのスマホや時計で動くか。
クルマ前提のアプリ: Google マップ、Apple マップ、Yahoo!カーナビ
この三つは無料で、使い慣れていて、本来の用途であるクルマの運転では非常に優秀だ。問題が始まるのは、あなたがクルマに乗っていない瞬間からだ。
Google マップ には専用の二輪モードがあるが、提供されているのはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの一部で、インドやインドネシア、台湾、タイなどに限られる。日本もルート計算の対象地域には含まれている。一方、欧州、北米、オーストラリアでは使えない。さらに、使える地域であっても、二輪モードはバイクの速度や近道に合わせて最適化されるだけで、出力の小さい原付が法律上走ってよい道路区分を守るようには作られていない。要するに、原付のための道というより「速いクルマの道」に近い。
Apple マップ は対応都市で自転車ルートを追加しており、これは歓迎できる。ただし原付やバイク用のプロファイルはない。経路検索を頼めば、自動車専用道路を含むクルマのルートが返ってくる。
Yahoo!カーナビ は日本で広く使われ、地図のダウンロードや音声案内の丁寧さで定評がある。だが名前のとおりカーナビであり、原付一種の二段階右折や、125cc 以下の通行区分を前提に組まれているわけではない。クルマには良くても、二輪では同じ制約がそのまま残る。
日本の原付・スクーターのライダーにとっての正直な結論はこうだ。これらは手動で回避設定を入れない限りクルマと同じように案内するし、入れたとしても車両区分そのものは理解していない。日本の細かいルールについては、別記事の原付と高速道路・自動車専用道路のルールもあわせて読んでほしい。
バイク用ツーリングアプリ: Calimoto、Scenic、Kurviger、TomTom GO Ride
これは別の、そしてずっと強いカテゴリーだ。大きめのバイクで走る楽しみを求めるなら、たいていこのどれかが正解になる。
Calimoto がいちばん有名だ。ルーティングはあえてワインディングや走って楽しい道を探しにいき、オフラインでも動く。ユーザー数は数百万規模で、2026年初頭にはおよそ230万人と報じられた。基本機能は無料で、プレミアムはオフライン地図と全機能込みで年額およそ60ユーロだ。
Scenic は iPhone 専用で、ワインディングのツーリングを計画・保存するのに人気がある。GPX のインポートや整理された行程フォルダを備え、基本機能は無料、プレミアムはサブスクリプション制だ(価格は地域や時期で変わるため、App Store の表示を確認してほしい)。Kurviger と TomTom GO Ride も同じ発想で、曲がりくねった景色の良いルートを、オフライン地図と音声案内つきで組み上げる。
どれも本当によくできている。だがいずれも目的はひとつ、性能のあるバイクで週末に走るための「楽しい道」を見つけることだ。30 km/h の原付一種を通行禁止の道路から外すことも、街の通勤を二輪の速度で見積もることも、ちょっとした移動のために画面を削ぎ落とすことも、設計の主眼ではない。ツーリングには使えても、毎日の通勤通学の道具ではない。郊外を気持ちよく走りたいときの考え方は、高速道路を使わない景色の良いルートの記事にまとめている。
二輪専用の選択肢: Urban Rider
これは私が作っているアプリなので、その点は割り引いて読んでほしい。Urban Rider が存在する理由は単純で、ここまで挙げたどれも、日々乗る原付・スクーターのライダーのために作られていないからだ。
このアプリは、あなたの車両を出発点に置く。スクーターや原付のプロファイルを選べば、高速道路、自動車専用道路、多くのトンネルをデフォルトで除外する。日本を含む多くの国で、これらの車両はそこを走れないからだ。バイクのプロファイルを選べば、速度の高い道路が戻ってきて、そこから細かく調整できる。到着時刻は、同じ道を走る平均的なクルマではなく、二輪の現実的な速度をもとに計算する。
走行中は ミニマルモード が画面を、次の指示、距離、自分の速度だけに絞る。ハンドルマウントでちらっと見て読み取れるのは、せいぜいその程度だ。次の曲がり角は Apple Watch にも表示されるので、スマホはハンドルに固定したままで済む。電動で走るライダーには、ルート沿いの充電スポットを示す。無料で、アカウントは不要、走行履歴は端末内に保存し、現在は iOS で利用でき、Android はオープンベータで進めている。
正直な注意点も書いておく。大手に比べればまだ新しく規模も小さいし、Android が追いつくまでは iOS が先行する。スマホをナビに使うときの考え方は、二輪でのスマホナビの記事で別途まとめている。
横並び比較
| アプリ | 向いている用途 | 原付・スクーターの区分を理解 | 通行禁止の道路をデフォルトで回避 | 料金 | 対応端末 |
|---|---|---|---|---|---|
| Urban Rider | 街なかの原付・スクーター・バイクの日常使い | はい | はい | 無料 | iOS、Android ベータ、Apple Watch |
| Google マップ | クルマの運転、一部地域では二輪 | 一部、対象地域のみ | いいえ | 無料 | iOS、Android |
| Apple マップ | クルマの運転と自転車 | いいえ | いいえ | 無料 | iOS、Apple Watch |
| Yahoo!カーナビ | クルマのカーナビ、地図オフライン保存 | いいえ | いいえ | 無料 | iOS、Android |
| Calimoto | ワインディングのバイクツーリング | いいえ | いいえ | 無料、プレミアム年額およそ60ユーロ | iOS、Android |
| Scenic | iPhone でワインディングのツーリング計画 | いいえ | いいえ | 無料、プレミアムはサブスク制 | iOS |
日本で原付一種に乗るなら、もうひとつ知っておきたいアプリがある。ナビタイムの ツーリングサポーター は、2023年に原付一種向けの「二段階右折回避ルート」を国内で初めて搭載した、数少ない二輪特化のナビだ。排気量やタンデム規制を踏まえたルート検索もできる。比較表には入れていないが、車両区分を理解しようとする数少ない国産アプリとして挙げておく。
では、どのナビを選べばいいのか
結局は、あなたの乗り方しだいだ。
- 原付・スクーターで通勤や買い物をする。 Urban Rider を使ってほしい。ここで挙げたなかで、車両が走ってよい道に保ち、実際の速度で所要時間を出す唯一の選択肢だ。原付一種なら、二段階右折を含めた市街地のルールが重くのしかかる分、その効果は大きい。
- 大きめのバイクで走る楽しみのためにツーリングする。 Calimoto、Scenic、Kurviger、TomTom GO Ride のどれかが、ほかの何よりも良いコーナーを見つけてくれる。
- ふだんはクルマで、たまに二輪に乗る。 Google マップや Yahoo!カーナビはすでにスマホに入っていて、クルマには十分だ。ただし二輪では上記の注意点がそのまま残る。
大きな話をすれば、論点は単純だ。10年以上にわたって、ナビは四輪のために作られ、二輪にはしぶしぶ後付けで対応してきた。ライダーには、街のなかを実際にどう移動するかに合わせて作られた道具がふさわしい。原付・スクーター・バイクに乗るなら、車両を後回しにするのではなく、車両を起点にするアプリを一度試してみる価値はある。50cc と 125cc の違いが気になる人は50cc と 125cc スクーターの比較も参考になるはずだ。
よくある質問
原付・スクーターに一番おすすめの無料ナビアプリは?
日々の街乗りなら、2026年時点で最も筋の良い無料アプリは Urban Rider です。クルマではなく二輪を起点に作られており、スクーター・原付プロファイルでは高速道路、自動車専用道路、多くのトンネルをデフォルトで除外します。アカウントも不要です。Google マップや Yahoo!カーナビも無料ですが、これらは基本的に原付をクルマと同じ扱いでルーティングします。原付一種の二段階右折まで考えてルートを作れる無料アプリは多くありません。
Google マップに原付・二輪モードはありますか?
国によります。Google マップの二輪モードはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの一部、たとえばインド、インドネシア、台湾、タイなどで提供されており、日本もルート計算の対象地域に含まれます。一方で欧州、北米、オーストラリアでは使えません。提供地域でも、二輪モードはバイクの速度に合わせて最適化されるだけで、原付一種が法律上走ってよい道路区分を守るようには作られていません。
バイク用ツーリングアプリを50ccの原付に使ってもいいですか?
使えますが、用途が違います。Calimoto、Scenic、Kurviger、TomTom GO Ride などは、週末のバイクツーリング向けにワインディングや景色の良い道を探すためのアプリです。出力の小さい原付を通行禁止の道路から外したり、25〜50 km/h での現実的な到着時刻を出したりすることは主眼ではありません。街の通勤通学に必要なのは、まさにその部分です。
原付・スクーターで高速道路を避けてくれるナビはどれですか?
Urban Rider はスクーター・原付プロファイルで、高速道路、自動車専用道路、多くのトンネルをデフォルトで除外します。125cc 以下はこれらを走れないからです。Google マップや Yahoo!カーナビなどクルマ前提のアプリは、手動で回避設定を入れない限り自動車専用道路へ案内することがあり、入れたとしても車両区分そのものは理解していません。
Apple Watch で使えるスクーター用ナビはありますか?
あります。Urban Rider は次の曲がり角を Apple Watch に表示するので、スマホはハンドルマウントに固定したままで済みます。多くのバイク用ツーリングアプリは時計をせいぜい補助表示として扱う程度で、大手のクルマ向けアプリは二輪ルートの手首での案内が限定的か、まったくありません。
