朝の通勤で電動アシスト自転車(e-bike)にまたがり、Google マップに「いちばん早い道」を尋ねる。すると、交通量の多い片側数車線の幹線道路へ案内されることがある。クルマなら理にかなった道でも、自転車にとっては快適とは言いがたい。アプリが壊れているわけではない。多くのナビは出発点がクルマで、自転車はあとから少し足しただけだからだ。その結果、街なかを 20〜25 km/h で走る e-bike や、ふだん使いの自転車は、ちょうど良い道具に出会いにくい。
私自身そうした乗り物に乗っていて、この記事の最後で紹介する Urban Rider というアプリを作っている。だから私は当事者であり、その分だけ偏っている。それを承知のうえで、ここでは2026年に e-bike と自転車のライダーが実際に使えるナビアプリを、できる限り正直に並べていく。それぞれが何を本当に得意とし、どこで力尽きるのかをはっきりさせたい。最後はたしかに Urban Rider を勧めるが、向き不向きも正直に書く。それがこの記事の主眼だ。
良い自転車ナビに本当に必要なものは何か
名前を挙げる前に、良い自転車・e-bike ナビが満たすべき条件を整理しておきたい。私が各アプリを測った物差しは次のとおりだ。
- 自転車を起点にしたルーティング。 自転車に適した道や車道の端、自転車レーンに沿って案内し、走りにくい高速の幹線道路をできるだけ避けてくれるか。
- 自転車の速度に合わせた到着時刻。 クルマ向けに計算した所要時間は、20〜25 km/h の e-bike にも、もっとゆっくり走る自転車にもほとんど合わない。
- ひと目で読める表示。 ハンドルは机ではない。必要なのは、ひとつの指示、ひとつの距離、ひとつの速度であって、情報を詰め込んだ画面ではない。
- 用途への適合。 街の通勤と週末の長距離ツーリングはまったく別物だ。求める道も、必要な機能も違う。
- 料金、プライバシー、対応端末。 無料か、サブスクか、走行履歴を吸い上げないか、手持ちのスマホで動くか。
どこでも使えるが万能ではない: Google マップ
Google マップ は無料で、ほぼ誰のスマホにも入っていて、サイクリングモードは約30か国で利用できる。自転車レーンや坂道もある程度は示してくれる。ちょっと知らない交差点を確認したいときや、初めての街でとりあえず方角を知りたいときには、これで十分なことが多い。
ただし正直に言えば、ルートの考え方は依然としてクルマ寄りだ。e-bike の速度を前提に最適化されているわけではなく、到着時刻もあなたの実際のペースや電動アシスト、信号待ち、坂を細かく反映するものではない。Google 自身、自転車の固定速度を公表していないので、表示される時間はあくまで目安だと考えておくのが安全だ。なお中国では Google マップは事実上使われておらず、高徳地図(Amap)や百度地図(Baidu Maps)のサイクリングモードが一般的だ。
ツーリングとグラベルの王者: Komoot
Komoot は、舗装路を外れて走る楽しみのためにあるアプリだ。グラベルや林道、ロングライドのルート設計が際立って強く、コミュニティが投稿した「ハイライト」や膨大なルート資産から、走って楽しい道を見つけ出せる。獲得標高や路面の情報も詳しく、オフライン地図にも対応する。長い一日のツーリングを計画するなら、これに勝るものは少ない。
料金は2025年の Bending Spoons による買収後に変わり、かつての地図の買い切りからサブスクリプション中心へ移行した。基本機能は無料で、Premium は年額およそ59.99ユーロ。地図を世界中で買い切りたい場合は、ワンタイムの「World Pack」がおよそ29.99ドルで用意されている。GarminやWahooなどのデバイスへルートを転送するには、現行のPremiumが必要だ。要するに、毎日の街乗りのためというより、週末に遠くへ走りに行くための道具である。
スポーツとセグメント: Strava
Strava はトレーニングと記録、そして仲間との競争のためのアプリだ。世界中のセグメントでタイムを競い、走行データを細かく分析できる。ロードバイクで距離やスピードを追いかける人には、これがホームになる。
ナビとして見ると、ルートビルダーは強力だが有料会員専用で、サブスクリプションは欧州でおよそ年額65ユーロ、米国でおよそ79.99ドルだ。ルート推薦やオフライン地図も会員向けの機能になる。トレーニング軸で乗るならお金を払う価値は十分にあるが、純粋に「街なかをA地点からB地点へ気持ちよく」という用途には作られていない。
街乗り寄りの自転車専用アプリ: Bikemap と Cyclers
クルマ前提のアプリとスポーツ向けアプリのあいだに、街の自転車に近い視点を持つアプリがある。
Bikemap は、ユーザーが投稿した膨大なルート資産が売りで、100か国以上で1,300万本を超えるルートが共有されている。自転車レーンなどのインフラや安全性を重視しており、街なかのサイクリストと相性が良い。バイクタイプ別のルーティングや世界中のオフライン地図も備えるが、それらは月額・年額(3年プランもある)のPremiumに含まれる機能だ。
Cyclers も自転車のために作られたナビで、ルートが自分の好みにどれだけ合うかを示す「Match」や、その道がどれだけ自転車に優しいかを表す「Safety Score」が特徴だ。最短・最速・バランスといった候補から選べ、画面は控えめで、バッテリーに優しいダークモードもある。多くの機能は無料で使い続けられ、追加機能は Cyclers Plus という有料プランになる。どちらも街乗りの選択肢として悪くない。
街と e-bike の通勤に: Urban Rider
これは私が作っているアプリなので、その点は割り引いて読んでほしい。Urban Rider が存在する理由は単純で、ここまで挙げたどれも、街なかで日々 e-bike や自転車に乗る人のために最初から作られてはいないからだ。
このアプリは、あなたの車両を出発点に置く。四つの車両プロファイル(スクーター、原付・モペッド、バイク、そして自転車・e-bike)を備え、自転車プロファイルを選べば、自転車に適した道や車道の端、自転車レーンに沿ってルートを引き、走りにくい高速の幹線道路をできるだけ避ける。到着時刻は、同じ道を走るクルマではなく、自転車の現実的な速度をもとに計算する。走行中はナビ画面がすっきり保たれ、次の指示、距離、自分の速度だけを大きく表示し、ハンドルマウントでちらっと見て読み取れるようにする。次の曲がり角は Apple Watch にも表示され、電動で走るなら充電スポットも示す。無料で、アカウントは不要、走行履歴は端末内に保存し、iOS と Android の両方でネイティブに動く。
正直な注意点もはっきり書く。Urban Rider はスポーツ・ツーリング向けでも、オフロード向けでもない。長距離ツーリングやグラベル、マウンテンバイク、獲得標高を踏まえた計画やトレーニングが目的なら、Komoot や Strava のほうが間違いなく良い道具だ。Urban Rider が本領を発揮するのは、毎日の街なかの移動であり、とりわけ自転車とスクーターや原付を乗り換える人にとって、車両を起点にできる強みが効いてくる。スマホをナビに使うときの考え方は、二輪でのスマホナビの記事にまとめている。
横並び比較
| アプリ | 向いている用途 | 対応端末 | 料金 | 弱点・注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Urban Rider | 街なかの e-bike・自転車の日常使い、二輪を乗り換える人 | iOS、Android、Apple Watch | 無料 | 長距離ツーリング・グラベル・トレーニングは非対応 |
| Google マップ | どこでも使える基本のサイクリング案内 | iOS、Android | 無料 | クルマ寄りで自転車・e-bike の速度を前提にしない |
| Komoot | ツーリング、グラベル、林道、獲得標高、ロングライド | iOS、Android、GPS機器 | 無料、Premium 年額およそ60ユーロ | 街の短距離通勤には機能が過剰、買収後にサブスク化 |
| Strava | スポーツ、セグメント、記録とトレーニング | iOS、Android、GPS機器 | 無料、サブスク 年額およそ65ユーロ〜 | ルート作成は有料会員専用、街乗りの案内向けではない |
| Bikemap | 街乗り、安全性重視、ユーザー投稿ルート | iOS、Android | 無料、Premium は月額・年額制 | オフライン地図やバイクタイプ別ルートは有料 |
| Cyclers | 街乗り、ルートの好み判定と安全スコア | iOS、Android | 無料、Cyclers Plus は有料 | 一部の高度な機能は有料プラン |
では、どのナビを選べばいいのか
結局は、あなたの乗り方しだいだ。
- 街なかで e-bike や自転車に乗って通勤・買い物をする。 Urban Rider を使ってほしい。自転車に適した道に保ち、自転車の速度で所要時間を出し、無料でアカウントもいらない。自転車とスクーターや原付を乗り換える人なら、車両を起点にできる利点はさらに大きい。
- 週末に遠くへ走りに行く、グラベルや林道を楽しむ。 Komoot が最良の選択だ。ルート設計と獲得標高、コミュニティのルート資産で、走って楽しい道を見つけてくれる。
- 記録とトレーニング、セグメントで競う。 Strava がホームになる。データ分析とルートビルダーは、目的が明確なライダーには十分に価値がある。
- 街乗りで別の選択肢も試したい。 Bikemap や Cyclers は、安全性やルートの好み判定といった自転車目線の機能を無料で試せる。
大きな話をすれば、論点は単純だ。10年以上にわたって、ナビは四輪のために作られ、自転車にはしぶしぶ後付けで対応してきた。ライダーには、街のなかを実際にどう移動するかに合わせて作られた道具がふさわしい。まずは無料で、自分の乗り方に合うものから試してみてほしい。街乗りの考え方をもう少し知りたい人はマイクロモビリティ・ガイドも参考になるはずだ。
e-bike や自転車のルートを実際に引いてみたい人は、無料の e-bike・自転車ルートプランナーの記事から始めるのがおすすめだ。スクーターや原付も乗るなら、スクーター・原付向けナビアプリのおすすめもあわせてどうぞ。
よくある質問
電動アシスト自転車(e-bike)に一番おすすめのナビアプリは?
毎日の街乗りや通勤なら、2026年時点で最も筋の良い選択肢は Urban Rider です。クルマではなく二輪を起点に作られており、自転車プロファイルでは自転車に適した道や車道の端、自転車レーンに沿ってルートを引き、交通量の多い幹線道路をできるだけ避けます。到着時刻も自転車の現実的な速度で計算します。無料でアカウントも不要です。一方、長距離ツーリングやグラベル、山道、獲得標高を意識したトレーニングが目的なら、Komoot や Strava のほうが向いています。
Google マップは自転車に向いていますか?
ちょっとした移動には便利ですが、万能ではありません。Google マップのサイクリングモードは約30か国で使え、自転車レーンや坂道もある程度示します。ただしルートは基本的にクルマ向けの考え方に寄っており、e-bike の速度を前提に最適化されているわけではありません。到着時刻もあなたの実際のペースや電動アシスト、信号待ち、坂を細かく反映するものではないため、目安として捉えるのが安全です。
無料で使える良い自転車ナビアプリはありますか?
あります。Urban Rider は無料で、アカウントも不要、iOS と Android の両方で使えて、自転車に適した道に沿って案内し、自転車の速度で所要時間を出します。Cyclers や Bikemap も無料で使い始められますが、オフライン地図やバイクタイプ別ルートなど一部の機能は有料プランになります。Google マップのサイクリングモードも無料です。街乗りで余計な機能や費用が不要なら、Urban Rider は手軽な出発点になります。
Komoot と Urban Rider、どちらを使うべきですか?
目的で選ぶのがおすすめです。週末の長距離ツーリング、グラベルや林道、獲得標高を踏まえた計画、Garmin や Wahoo への転送が中心なら Komoot が圧倒的に強く、私もそちらを勧めます。一方、平日の通勤や買い物など街なかでの e-bike・自転車移動が中心で、自転車に適した道に保ちつつ無料で手早く案内してほしいなら、Urban Rider のほうが向いています。自転車とスクーターや原付を乗り換える人にも、車両を起点にできる Urban Rider が便利です。
