ベスパは街でいちばん見ればすぐにそれとわかる乗り物のひとつで、市街地を走る楽しさも格別だ。だがナビゲーションとなると話は別で、これがなかなか手強い。クラシックやヴィンテージのベスパには画面そのものがなく、現行モデルでも結局はスマホに手が伸びる。問題は、誰もがすでに持っているスマホの地図アプリ、Google マップ、Waze、Apple マップが、ベスパをちゃんと理解していないことだ。これらはベスパをクルマや一般的なバイクと同じに扱い、本来は走るべきでない速度の高い道路へ案内し、乗ってもいない車両を基準にした到着時刻を出してくる。
この記事は、きちんとしたベスパのナビについての話だ。なぜベスパが特別な存在なのか、その車両に対してナビが本当にすべきことは何か、カメラをじわじわ壊さずにスマホをどう取り付けるか、そして私が作っているアプリがそこにどう収まるのかを見ていく。私自身が小さなスクーターに乗り、Urban Rider を作っているので、当事者であり、その分だけ偏っている。それを承知のうえで、主張はあくまで現実に即して進める。
名前についてひとこと。Urban Rider は独立したアプリであり、Piaggio やベスパと提携・推奨・スポンサー関係は一切ない。「ベスパ」は Piaggio の登録商標で、ここではあくまでその乗り物を指すために使っている。人々が検索し、実際に乗っているのがそれだからだ。
ベスパは「ただのバイク」ではない
ベスパという言葉が指す範囲は驚くほど広く、その幅こそがナビをややこしくしている張本人だ。小さい側には 50cc があり、これは正真正銘の原付で、欧州の多くの地域ではおよそ45 km/h に制限され、高速道路は走れない。中間には 125 と 150 のモデルがあり、より速く街乗りに向くが、それでも国によっては高速道路から外されることが多い。頂点に立つのが GTS 300 で、これはバイク区分にあたり、法律が認める範囲で高速道路の速度を保てる。
つまり、ひとくちにベスパといっても、街中を走る遅い原付のこともあれば、高速道路まで走れる本格的なスクーターのこともある。そして正しいルートは、それぞれでまったく別物になる。一般の地図アプリは世界の大半でスクーターや原付の車両モードを持たないため、この違いを見分けられない。たいていはクルマ、ときにバイクという一つのプロファイルを選び、すべてのベスパを同じように案内する。小型のベスパにとってそれは、遅すぎる、あるいは法律上走ってはいけない道へ送り込まれ、しかもクルマ基準の到着時刻を上から貼り付けられることを意味する。
クルマ用の地図アプリがベスパで間違えること
50cc のベスパで Google マップに目的地を入れると、引かれる青い線はクルマ向けに描かれる。クルマのルーティングエンジンから見れば効率の良い道なので、制限速度 80 km/h の速い幹線道路へ平気で案内する。あなたの原付は45 km/h あたりが上限だから、いまや想定外の存在として、その道でいちばん遅い乗り物になってしまう。「高速道路を使わない」のスイッチは多少は助けになるが、これも高速道路に分類された道を外すだけで、小さなベスパには同じく不向きな、速度の高い幹線道路や片側複数車線の道路までは外してくれない。
二つ目の問題は時間だ。クルマ用アプリは、時速60〜70 km/h で巡航する前提で、クルマの速度を基準に到着時刻を見積もる。小さなベスパにはそれができないので、アプリが「最速」と呼ぶルートは、あなたにとって最速でないことが多く、到着時刻は最初の曲がり角からずれている。結局、乗ってもいない車両のために計算された数字を頼りに計画を立てることになる。これはアプリが壊れているという話ではない。クルマのためにきちんと仕事をしているだけだ。ただ、あなたがベスパに乗っているとは知らされておらず、それを尋ねる手立てもないのだ。
ベスパでのスマホ取り付けという現実
スマホが画面そのものになる以上、その取り付け方はクルマ以上にベスパでは重みを持つ。多くのライダーはハンドルバーのクランプマウントを使う。ハンドルが細かったり、ボディワークで覆われていたり、手が届きにくかったりする車種では、ミラーのステーに固定するマウントが人気の代わりで、スマホを見やすい位置に保ってくれる。どこに付けるにせよ、石畳や穴ぼこを越えたときにガタついて緩んだり飛んでいったりしないよう、しっかりロックされる必要がある。そして、視線を長く道路から外さなくても、ちらっと見れば次の曲がり角がわかる位置に収まっているべきだ。
もうひとつ、まじめに受け止める価値のある問題がある。振動だ。最近のスマホのカメラは、ピント合わせや手ぶれ補正に小さな可動部品を使っている。ハンドルから伝わる高周波の振動が長く続くと、そうした部品が時間とともに摩耗し、写真がぼやけたり、カメラがピントを探って迷ったりする。これはよく知られた懸念だ。スクーターの振動は大型バイクより小さく、Apple 自身も出力の小さいバイクでは防振マウントを勧めるにとどめ、長時間の使用は推奨しないとしている。それでも、長距離や頻繁な走行ではリスクは現実のものだ。簡単な備えは、クランプとスマホの間に防振ダンパーを入れたマウントを使うことで、これが振動の大半を吸収してくれる。サンシェードを足すか、画面の角度を調整して反射を抑えるとよい。多くのスマホは夏の直射日光のもとで動作を抑えたり画面を暗くしたりすることも覚えておきたい。
ベスパのナビアプリで見るべき点
宣伝文句をそぎ落とせば、ベスパのライダーがナビに求めるものは、クルマ用アプリが提供しない次の四つだ。
- 車両区分に応じたルーティング。 アプリはあなたの車両区分を理解し、それに合わせて案内すべきだ。50 や 125 を高速道路や主要な幹線道路から、わざわざ思い出して切り替えるスイッチではなく、デフォルトで外してくれること。
- スクーターの速度に即した到着時刻。 ベスパが実際に出す速度をもとに到着時刻が計算され、最速として選ばれたルートが本当にあなたにとって最速であること。
- ひと目で読める表示。 ひとつの明確な指示、ひとつの距離、ひとつの速度。ハンドルは机ではなく、ごちゃごちゃしたクルマ向けの画面は45 km/h では場違いな道具だ。
- 聞き取りやすい音声案内。 視線を道路に、手をハンドルに置いたまま走れるよう、スマホを凝視せずに済む音声での案内があること。
Urban Rider はベスパにどう合うか
これは私が作っているアプリなので、その点は割り引いて読んでほしい。Urban Rider は、クルマ用アプリが決して尋ねない問いから始まる。あなたは何に乗っているのか、だ。このアプリにはベスパの車両区分に直接対応するスクーターと原付のプロファイルがある。自分の車両に合うプロファイルを選べば、それに合わせてルーティングが変わる。原付とスクーターの区分では、高速道路や主要な幹線道路をデフォルトで除外するので、小さなベスパは何も切り替えなくても、本来走るべき街なかの道にとどまる。
アプリがあなたの実際の速度を知っているからこそ、到着時刻はクルマの速度ではなく二輪のペースで計算され、実際の走行に即した数字になる。走行中はナビ画面がすっきり保たれ、次の指示、距離、自分の速度だけを大きく表示する。これこそハンドルでちらっと読み取りたいものであり、聞き取りやすい音声案内が視線を上げたまま走らせてくれる。アカウントの作成は不要で、走行履歴は端末内に保存され、無料で iOS と Android の両方にネイティブ対応している。
設定はほんの一瞬で済む。自分のベスパに合うプロファイルを選ぶだけだ。50cc なら原付プロファイルを選べば、速い道を避けつつ原付の速度で所要時間を計算する。125、150、GTS 300 なら、スクーターまたはバイクのプロファイルを選べば、車両と法律が許す範囲で速い道も使えるようになる。そのひとつの選択が、ベスパのために組まれたルートと、クルマのために組まれたルートとの分かれ目になる。
正直な注意点も書いておく。Urban Rider は Google マップより新しく規模も小さいし、リアルタイムでみんなの情報を集める渋滞情報では Waze にまだ分がある。それでも、ベスパが実際にどう街を横切るべきかという日々の問いに対しては、クルマのルートに回避設定を後付けするより、車両そのものから出発するほうがまさる。これはベスパが本来そのために作られているような走りのためのアプリであり、それこそが要点だ。
ベスパで使う Google マップ・Waze・Apple マップと Urban Rider
| ベスパで必要なこと | Google マップ / Waze / Apple マップ | Urban Rider |
|---|---|---|
| どのベスパに乗っているか尋ねる(50、125、300) | 大半の地域でスクーター・原付モードなし | はい、原付とスクーターのプロファイル |
| 高速道路や速度の高い幹線道路を回避 | 手動の「高速道路を使わない」、高速道路のみ | 原付・スクーター区分はデフォルトでオン |
| 到着時刻 | クルマの速度で見積もり | 実際のスクーター速度で算出 |
| ひと目で読める走行画面 | クルマ向けの画面 | すっきりした走行画面、ハンドル向けに設計 |
| 料金と対応端末 | 無料、iOS、Android | 無料、iOS、Android、アカウント不要 |
実践的な結論
使えるのがスマホの地図アプリだけなら、「高速道路を使わない」と「有料道路を使わない」をオンにして、目を開けて走ろう。速度の高い片側複数車線の道へ案内された瞬間、アプリはもうあなたを守ってくれていない。最初からあなたがベスパに乗っているとは知らなかったのだ。スマホはしっかり固定し、カメラを守るために防振ダンパーを使い、ルートは指示ではなく提案として受け取ってほしい。
日々の移動には、何に乗っているかを尋ね、それに合わせて案内するアプリのほうが、こまかい調整やずれた到着時刻から解放してくれる。もっと深く知りたいなら、スクーター・原付向けナビアプリの比較でおすすめをまとめ、記事の一覧でほかのテーマも扱っている。自分のベスパにどのプロファイルが合うかを知りたい人は、50cc と 125cc スクーターの比較も役に立つはずだ。
よくある質問
ベスパに一番おすすめのナビアプリは?
ベスパに最適なナビアプリは、あなたがクルマではなく小さな二輪に乗っていることを理解しているアプリです。原付やスクーターを高速道路や速度の高い幹線道路から外せる車両区分に応じたルーティング、実際のスクーターの速度をもとにした到着時刻、そしてハンドルでひと目で読める表示が目安になります。Urban Rider はまさにこのために作られています。50cc のベスパなら原付プロファイル、125 や 150、GTS 300 ならスクーターまたはバイクのプロファイルを選べば、その車両区分に合わせてルートと所要時間を計算します。無料で、iOS と Android の両方にネイティブ対応しています。
ベスパで Google マップを使ってもいいですか?
使えますし、多くのライダーが使っています。ただし二つの限界を知っておいてください。Google マップには欧州、北米、オーストラリアでスクーターや原付の車両モードがないため、ベスパをクルマとして案内し、到着時刻もクルマの速度で見積もります。ルート設定で「高速道路を使わない」「有料道路を使わない」をオンにすれば明らかな高速道路は避けられますが、その設定は高速道路に分類された道を外すだけで、小さなベスパが避けるべき速度の高い片側複数車線の幹線道路までは外しません。ルートはあくまで提案として受け取り、速い道に案内されたら注意してください。
ベスパにスマホをどう取り付ければいいですか?
多くのベスパのライダーはハンドルバーのクランプマウントを使います。ハンドルが細かったりカバーで覆われていたりする車種では、ミラーのステーに固定するマウントもよく使われます。視線を道路から大きく外さずにちらっと見える位置に置き、段差で外れないようしっかり固定してください。ハンドルの振動は時間とともにスマホのカメラを傷めることがあるため、クランプとスマホの間に防振ダンパーが入ったマウントのほうが安全です。
ベスパの振動でスマホが壊れることはありますか?
あります。最近のスマホのカメラはピント合わせや手ぶれ補正に小さな可動部品を使っており、ハンドルから伝わる高周波の振動が続くとそれらが摩耗し、写真がぼやけたりピントが合いにくくなったりします。スクーターの振動は大型バイクより小さいものの、スマホをハンドルに固定したまま長時間走り続けるとやはりリスクは残ります。防振マウントはその振動の大半を吸収してくれるので、賢明な備えになります。
ベスパで高速道路を走れますか?
車種と各地のルールによります。50cc のベスパは原付にあたり、欧州の多くの地域でおよそ45 km/h に制限され、高速道路は走れません。GTS 300 などの大きなベスパはバイク区分で、法律が認める範囲で高速道路を使えます。125 や 150 はその中間で、国によっては高速道路から外されることが多いです。ナビアプリがルートを選ぶ前に、あなたがどのベスパに乗っているかを知る必要があるのは、まさにこのためです。
